2016年連続講座「朝鮮女性の歴史を辿って」第1回


在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会2016年連続講座「朝鮮女性の歴史を辿って」

第1回  「朝鮮近代を駆け抜けた女性たちと出会う」

 

▼案内

日本による朝鮮の侵略と植民地支配の歴史の中で、朝鮮女性はどのような生を紡いできたのでしょうか。国家の存亡をかけて義兵闘争に参加した女性義兵隊の義兵長、子どもたちに向けて朝鮮の歌と話で民族の魂を蘇らせようとした文学者、日本の官憲に捕らえられ殺されても自分の死体を探せるようにチマ(スカート)の裏に自身の名を書き残した独立活動家…。日本帝国主義に抗い朝鮮近代を生きた女性たちと、いま、共に出会い直してみませんか?

◆日時 2016年2月23日(火)18:30~(20:30頃終了予定)

◆報告者 金真美さん(朝鮮大学校教員、朝鮮児童文学研究)~1986年生まれ。三重県出身。朝鮮大学校文学歴史学部卒、朝鮮大学校研究院総合研究科前期、金日成綜合大学 文学大学実習過程修了。専門は、朝鮮児童文学。朝鮮民主主義人民共和国文学碩士学位取得。現在、朝鮮大学校文学歴史学部助教。『朝鮮新報』にて「ウーマン・ヒストリー」を連載中。

 

▼内容の振り返り

当日の参加者は26名。参加者をジェンダー別でみると、女性18名(69%)、男性8名(31%)、年代別でみると20~30代19名(73%)、40~60代7名(27%)でした。

金真美さんはまず、ご自身がとても影響を受けた本として、呉香淑さんが書かれた著書『朝鮮近代を駆け抜けた女性たち32人』(2008年、梨の木舎)を紹介されました。
同書の読書会を朝鮮大学校で行うなかで、朝鮮近代において変わらぬ価値観をもって主体的に生きていた女性たちと出会う大切さを学生たちと共に学んできたと話されました。

報告の中では、以下のとおり計10名の朝鮮女性たちが紹介されました。なお、それぞれの詳しい紹介については、金真美さんが『朝鮮新報』で連載されている「ウーマン・ヒストリー」に掲載されていますので、ご関心のある方はぜひお読みいただければと思います!

・崔順愛(1914-1998):朝鮮初の文学者夫婦
・姜香蘭(1900- ? ):朝鮮初の断髪女性
・卞東琳(1916-2004):二人の芸術家を愛した新女性
・李善熙(1911- ? ):女性の普遍性を求めたジャーナリスト、小説家
・尹熙順(1860-1935):筆と銃を持って戦った女性義兵長
・夫春花(1908-1995):「海女抗日闘争」を主導
・崔貞淑(1902-1977):済州島教育での先駆者
・禹鳳雲(1889? – ? ):女性仏教運動の先駆者
・李桂筍(1914-1938):抗日パルチザンの女性革命家
・裴成春(1902-1938):パルチザン裁縫隊隊長

金真美さんは報告の中で、朝鮮女性たちが実際に残した詩や投書、文学作品、言葉などの紹介を通じて、かのじょたちの想いや声をとてもいきいきと伝えてくれました。
以下、報告の中で印象的だったものをいくつかご紹介します。

「私も人間であり、男性と同じように堂々とした人間である。男性に頼ったり、他人に同情を求めたりするのは根本から間違ったことである。すべての苦痛は自分が自分を知らないことに理由がある。女としての苦痛も自分を知らないからである。」
「女も強く生きようとすれば、決して男に引けを取らない、自身の力で生きなければならない。」(姜香蘭)

「国家の存亡に関わる時、どうして救国隊列への参加に男女の差別があるのですか!」
「…我ら婦人たちも義兵をするだろう。…我ら朝鮮婦人は警告する。 朝鮮の婦人尹熙順」(尹熙順)

「いかに倭奴(ウェノム)が強かろうと我らが団結すれば倭奴を捉えることは容易いこと 女とはいえ国を思う心を知らずにいようか 男女が違えども国がなければ何の意味があろう われらも義兵として立ち上がろう われらも義兵として立ち上がろう」(「妻の義兵歌」)

「私たちは済州島のかわいそうな海女 悲惨な暮らしで世の中がわかる寒い日も暑い日も雨降る日も あの波に苦しめられるわが身…」
夫春花が主導した1932年の海女抗日闘争で1000人の海女が大合唱した歌の一部)

「男でも女でもこの世に人として生まれた以上、何かしら役に立たなければならないなら、朝鮮人女性も今日から互いに支えあい、知識のある人は分からない人を親切に教え皆一緒に公平な社会を作り、人間らしい生活をしなければならない」(禹鳳雲)

「今は涙を流している時期ではありません。我々がいくら涙を流しても喜ぶのは日帝の敵だけです。」(李桂筍)

金真美さんは報告の最後に、朝鮮近代を駆け抜けた女性たちと出会う意義について、祖国が分断されている今だからこそ抗日運動で発揮された女性たちの不屈の精神が南北で継承されてきたことを知ることが重要と話されながら、植民地主義と性差別という複合的な抑圧のもと朝鮮女性が真の人間性を解放するために闘争する姿は、私たち在日朝鮮人社会におけるフェミニズムの可能性を示すものであり、今後も朝鮮近代女性から得た勇気と経験と教訓を糧に連帯していきたい、と話されました。

その後は、抗日運動を行っていた女性たちの画期性、朝鮮近代女性たちの生を小説や映画の題材にできる可能性、新女性と抗日闘争を行った女性たちの抵抗の論理の差異・共通点、性産業に従事させられた朝鮮女性たちへのまなざしなどについて、質疑応答が行われました。

 

□■ 参加者の感想 ―――――――――*

◯とても感動的でした。新女性のユニークな文章をそのままご紹介してくださったり、海女の民衆運動を歌と共に生き生きとご説明くださったり、パルチザンの生活に根ざした活動がとても印象的でした。私自身、解放前後の女性たちの生と抵抗を切断せずにつなげて見ていきたいと思いました。

◯初めて知ることだらけで、たくさんの驚きがありました。また、朝鮮女性たちの一つひとつの人生がすべて感動的で、とても勇気づけられました。
まとめの、個々のアイデンティティは歴史的、社会的関係性の文脈で語るべき…という部分が印象的でした。具体的な個人史から、その時代背景までをしっかり学んで視野を広げていかなくてはと思います。

◯たいへん勉強になりました。大多数の日本人が朝鮮人の「近代」をあまりにも知らないと思います。植民地時代を生きた/闘った女性たちについてもっと知りたいと思います。

はるか前から朝鮮女性によるフェミニズム運動が存在したのだということを改めて学ぶことができました。一方で、このように昔から運動があり、特に済州島の海女闘争のように大衆化させる力があったのにもかかわらず、それから100年近くなった今も問題が解決されないのかということを考えました。

◯女性が抱えさせられた重層的な暴力は、女性たちにとって葛藤として感受されてきた。しかし、植民地社会はその発露さえどこにも許さない。行き場のない苦しみを、近代女性たちから感じました。そして、それが今へと連続していることも、感じました。

◯歴史上には男性もいれば女性もいる、そしてそれを学べない、学ばせない環境に自ら身を置いていたのではないかと思いゾッとしました。
そして今日は新たに歴史上には「本当に」「女性」を生きた「女性」がいたことを知り、気づき、とても勉強になりました。
自分が自分として自らの意志で「性」を生きて行くことはとても大事だし、そしてそれを周りに流されたり、環境に自ら合わせていくことでは真の解放にはほど遠いと再認識しました。生き生きとしたリアルな歴史を生きた人々に、とても興味を持ちました。