【本部会の活動報告をしたイベントが報道されました!】

 8月29・30日に行われた関西クィア映画祭のオンラインイベントに関する記事が出ました。本部会の活動報告を行った朴金優綺さんの発言も紹介されています。ぜひお読みください!

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2020.09.04 (10:08)

黒人差別と在日朝鮮人差別を考える/映画とライブトーク

オンラインで

2013年、黒人男性が射殺された事件をきっかけに始まったBlack Lives Matter(以下、BLM)運動は、今年5月、白人警官によって黒人男性が殺された事件を機に世界的な運動に発展した。黒人奴隷の歴史と今に続く米国の制度的人種差別に抵抗する運動だ。

日本でこれに相当するのが在日朝鮮人への民族差別と、それに対する闘いであるとの認識の下、米国における黒人差別と在日朝鮮人差別を考えるオンラインイベントが8月29、30日の両日、開催された。「『日本には人種差別がないから関係ない』ってホント?—#BlackLivesMatterと在日朝鮮人差別から考える」と題した企画では、映画上映と当事者のライブトークを通じて日本における人種差別、民族差別を問い直した。

主催したのは、「性」をテーマにした映像作品を上映する「関西クィア映画祭」の実行委員会。実行委員で共同代表の一人であるひびのまことさんは、「BLM運動について日本のメディアも報道し多くの人が関心を持つ一方、『日本には人種差別がないから関係ないのでは』という声もあった。日本に住む黒人の声を聞いたり、日本の制度的レイシズムや日本の植民地主義・帝国主義に長年抵抗してきた在日朝鮮人たちの声を聞く場を設けることで、この疑問に答えようと思った」と話す。ひびのさん自身、セクシュアルマイノリティー(以下、セクマイ)の活動家として運動するうえで、「コミュニティー内部にも存在するレイシズムに明確に対峙していくことが当然だと考えている」と話す。こうした認識の下、映画祭では日本軍性奴隷制問題を扱う映画も上映してきた。

1日目は映画「アウト・イン・ザ・ナイト」を鑑賞し、米国における黒人クィア女性が置かれる状況について理解を深めた後、Black Lives Matter Kyoto(BLM京都)のメンバーであるキーン・ミッシェルさんがBLM運動や日本における黒人差別について自身の経験に基づいて報告した。

2日目は、映画「戦後在日五〇年史 在日(歴史編)」の鑑賞を通じて在日朝鮮人の歴史を学んだ後、ひびのさんが日本のセクマイコミュニティー内部における民族差別について、続いて在日本朝鮮人人権協会の朴金優綺さんが同協会の性差別撤廃部会の活動について、それぞれ報告した。

ともにレイシズムを問う/各氏の報告から

「黒人の歴史は常に苦難でいっぱいだった。米大陸の歴史の中で、私たちは大事にされたことがないし、人間とすら見られてこなかった」

ミッシェルさんは報告で奴隷制の歴史とその廃止、自身の出身国であるジャマイカにおける黒人差別を概括したうえで、米国で起きているBLM運動について言及。BLM運動は、白人至上主義や、黒人コミュニティーに対する国、州、自警団による暴力への抵抗を目標としていると説明した。

では、なぜ日本でBLM運動を行うことが重要なのか。ミッシェルさんは、「ある場所で誰かに起こることは、別の場所でまったく異なる誰かに起こり得る。人間は他者の苦しみを無視してはいけない。そうしてしまうと私たちは再び人種主義的な選択をしてしまう」と話す。

そして、「日本も決して黒人差別と無縁ではない」としたうえで、日本における黒人差別の事例、自身の被差別体験にも言及した。

また、「日本には植民地支配の歴史があり、日本に暮らす在日朝鮮人の現在も続く苦しい状況、立場も忘れてはいけない。日本の状況は米国における黒人の平等を求める闘いに似ている」と話した。

左が50~60年代の公民権運動、右が現在のBLM運動の写真(ミッシェルさんの報告より)

ひびのまことさんは、国勢調査に関する国会における議論を切り口にセクマイ内部における民族差別の問題に切り込んだ。

2010年、日本に住むすべての人を対象にした国勢調査における同性カップルに関する国会での議論で在日朝鮮人が排除され、またそのことがセクマイ内部でも問題視されなかったことを、「調査は日本国民だけを対象としたものではないにも関わらず日本国民の権利だけを取り上げることは、同性カップルの権利に関する議論に国籍条項を持ち込むもので到底許せない」と喝破した。

無自覚な差別に苦しみ、抵抗してきたセクマイ自身が、在日朝鮮人への差別問題をどう考えなければならないのか―。ひびのさんは、「マジョリティーとしての日本人が歴史を知らないという事実がある。それが実際に私たちの社会の中にいる多くの仲間を傷つけているという事実ときちんと向き合わなければいけない」と話す。

そのうえで、日本人の無知によって生み出される在日朝鮮人の差別状況を克服するためには、日本人が歴史的事実を学ぶこと、学ぶ場をつくること、朝鮮人差別に反対の意思を表明することが大切だと話した。

朴金優綺さんは、まず在日朝鮮人の差別的状況について、再入国許可問題、高齢者・障害者の無年金問題、日本学校における民族差別、路上やネット上のヘイトクライムなど網羅的に概説した。

そのうえで、在日朝鮮人女性に対する差別・暴力の事例について、国勢調査に示される在日朝鮮人女性の失業率および非正規雇用率の高さ、90年代に多発した「チマ・チョゴリ切り裂き事件」、近年のヘイトデモにおける在日朝鮮人女性への性的暴言、ヘイトスピーチの根絶を訴えてきた在日朝鮮人女性たちが被る二次被害などを挙げた。

朴金優綺さんは、「在日朝鮮人女性は様々な差別が絡まり合い、相互に作用する複雑な抑圧構造の中で、生きていかざるを得ない状況にある」とし、性差別撤廃部会が、在日朝鮮人女性だけでなく誰もが差別や暴力を経験することのない社会を実現したいという思いで、「だれもがいきいきと生きられる社会のために」を合言葉に掲げて行ってきた活動について紹介した。

性差別撤廃部会の活動について報告する朴金優綺さん(中央下)

その活動内容は、あらゆる差別と暴力、それへの抵抗運動について学ぶ講座やシンポジウム、ワークショップ、上映会などの開催、日本軍性奴隷制問題の克服を目指すアクション、在日朝鮮人のジェンダー意識に関するアンケート調査、ジェンダーやセクシュアリティーをテーマにした朝鮮学校での出張授業、在日朝鮮人女性の交流会、在日朝鮮人セクマイの交流会など、多岐にわたる。

最後に、朴金優綺さんは、部会として今年は在日朝鮮人女性から寄せられたハラスメント被害経験に基づき、「在日朝鮮人女性のハラスメント事例集」の発行を目指しているとし、「今後も『だれもがいきいきと生きられる社会』の実現のために、みなさんとつながっていければうれしい」と話した。

(金淑美)

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