性差別撤廃部会シンポ「日本軍『慰安婦』問題と朝鮮半島の分断」

 「合意」によって不可視化される被害者たち

 4月23日、在日本朝鮮人人権協会の性差別撤廃部会主催でのシンポジウム「日本軍『慰安婦』問題と朝鮮半島の分断~不可視化された被害者を見つめて~」が開催された。

 東京・飯田橋で開催された同シンポには150名が参加。うち在日朝鮮人が6割、在日朝鮮人学生を中心とした10~30代の参加者が過半数を占めた。

性差別撤廃部会主催でのシンポジウム「日本軍『慰安婦』問題と朝鮮半島の分断~不可視化された被害者を見つめて~」

 開会にあたって、同部会責任者の李全美さんが同部会のこれまでの活動内容を紹介した後、李杏理さん(一橋大学大学院博士課程)が「韓日の談合と『慰安婦』問題の現在」の題で報告。2015年12月28日の韓日外相による「慰安婦合意」発表に至るまでの経緯とその後の事実経過について説明され、「韓米日による軍事同盟強化という目的のなかに『合意』があり、日本による朝鮮半島の南側との和解は北側に対する敵対とセットである」と強調。「日本の国家責任や植民地支配責任、戦後日本の軍事化のプロセスと軍事同盟を不問に付していては、次なる戦争と性暴力を阻止できないのではないか」との提起があった。

 続いて、金優綺さん(在日本朝鮮人人権協会事務局員)が「朝鮮民主主義人民共和国の被害者と『合意』への反応」について報告。朝鮮における日本軍性奴隷制サバイバーの被害申告の状況及びこれまで明らかになっている被害者の出生地、連行時の年齢、連行先などについて報告がされた後、「合意」に対する朝鮮の立場や朝鮮在住被害者の「合意」への反応についても報告され、「日本政府がどれだけ問題を封じ込めようとしても、法的責任を認めた上での被害者の権利救済をしない限り、当時の国際法・国内法違反や現在の国際人権条約違反、人道に対する罪に相当する重大な国際法上の違法行為という事実は不変」と強調した。

 金優綺さんの報告の中では、写真家の伊藤孝司さんが1998年に撮影した朝鮮の被害者・鄭玉順さんの証言映像が約20分にわたって上映され、日本軍による行為の凄惨さや、鄭玉順さんの体中に無残に残る入れ墨の跡に、会場内が衝撃に包まれた。

 最後に、金美恵さん(東京大学大学院特任研究員)が「日本軍『慰安婦』犠牲者 裵奉奇さんを通じてみる朝鮮半島の分断と『在沖朝鮮人史』」と題して報告。韓国社会で裵奉奇さんが広く知られなかったのは、沖縄で裵奉奇さんを支援していたのが「朝鮮総聯の人々」だったからと話した「ナヌムの家」のスニムの言葉がきっかけで裵奉奇さんに関心を持ったと話し、植民地時代、米軍占領時代、沖縄施政権が日本に返還された後の裵奉奇さんの辿った軌跡について報告した。沖縄戦の朝鮮人生存者と残留者、施政権返還後の在沖朝鮮人の法的地位についても報告しながら「日本軍性奴隷制の被害者は南北、在日、沖縄にもいた。朝鮮民族として、必ずや日本政府から謝罪と賠償を取らなければならない」と強調した。

 参加者からの質疑応答後、裵奉奇さんと金学順さんのカミングアウトの性質の違い、日本軍性奴隷問題の克服が朝鮮半島の平和的統一を切り開く可能性、日本軍性奴隷制サバイバーを記憶することの重要性について各パネラーから発言があり、シンポは終了した。

 同部会では2015年から、裵奉奇さんの証言が『朝鮮新報』に掲載された日(1977年4月23日)を記念して、日本軍「慰安婦」問題について考えるための「4.23アクション」を行っている。

 【在日本朝鮮人人権協会性差別撤廃部会】